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商標「デュアルスキャン\Dual Scan」事件
(2016年2月19日)

<新着コラム> by 永露祥生

昨日、興味深い報道が出ていましたね。

報道によれば、『体脂肪計に「DualScan」の商標を登録しているオムロンヘルスケアが、
同じ名前を登録したタニタの商標を無効にするよう求めた訴訟の判決が17日、知財高裁であった。
清水節裁判長は「誤認・混同のおそれがある」としてタニタの商標は無効と判断した。(朝日新聞社)

ということです。

報道からは明確ではありませんが、要は、「無効審判→棄却審決→審決取消訴訟」の流れということでしょう。
裁判所の判決DBにまだ掲載されておらず、予想の範疇ではありますが、
おそらくは指定商品の類似性が主に争われたものと推測されます。

実際に、少し調べてみたところ、以下の商標の存在がわかりました。

(1)商標「デュアルスキャン」(第5160746号)
  商標権者:オムロンヘルスケア株式会社   登録日:2008/08/22
  指定商品:(第10類)体脂肪測定器,体組成計

(2)商標「DualScan」(第5160747号)
  商標権者:オムロンヘルスケア株式会社   登録日:2008/08/22
  指定商品:(第10類)体脂肪測定器,体組成計

(3)商標「デュアルスキャン\Dual Scan」(第5576127号)
  商標権者:株式会社タニタ         登録日:2013/04/19
  指定商品:(第9類)脂肪計付き体重計,体組成計付き体重計,体重計

「なるほどね・・・」といった感じでしょうか。

(1)(2)の指定商品である「体脂肪測定器」、「体組成計」の類似群コードは、「10D01」です。
一方、(3)の指定商品である「体重計」の類似群コードは「10C01」です。

なので、(1)や(2)の登録商標が存在していたけれども、商品非類似で(3)が登録されてしまった。
そこで、オムロン側が(3)に対して無効審判をかけた、といったところでしょうか。
そして、特許庁の審決では「非類似」と判断され棄却されたと。

さて、実務上、しばしばこのような商品の記載に関する問題に遭遇することがあります。
「A付きB」と「B付きA」、商品としてはそもそもAなの?Bなの?という問題です。
私の経験では、9類と10類で特に多い印象があります。今回もそのようですね。

このような場合、メインの機能がどちらかという視点や、売り場等の視点から判断していくのが一般的ですが、
本件の「体脂肪測定器」と「脂肪計付き体重計」の比較といった話となると、
現在では「体脂肪測定」と「体重測定」の機能がほぼ同時に備わっている商品が大半ということを考えれば、
柔軟に類似性を認めた裁判所の判決に、頷ける気がします。

そういえば、今や当たり前の「スマートフォン」も、数年前に、商品としては「電話機」なのか
「コンピュータ」なのか、という話になったことがありました。
「Phone」なんだから「電話機だろう」ということでしょうか、
特許庁でも当時は電話機の類似群コードである「11B01」が付けられていました。
しかし、現在では、商品の実態を考慮してか、「スマートフォン」にはコンピュータの類似群コードである
「11C01」も付けられています。

本件は、報道からは「あのタニタが負けた!」のような印象を受けますが、個人的には仕方がないように思います。
タニタが(3)を出願する際に、(1)や(2)の存在を知っていたのかはわかりません。
指定商品の記載方法を見ると、知っていたけどあえて出願したようにも感じられます
(それはそれでチャレンジャーすぎな気もしますが・・・)。

一方で、知らなかったということであれば、やや調査不足ということでしょう。
たしかに、類似群コードに「10C01」を指定して検索すると、(1)や(2)は発見されなかったはずです。
もっとも、調査慣れをしている弁理士であれば、このような事態にも備えて、最低限、
同一商標の存在には注意を払い、類似群コードの指定なしでも一応検索するものですが。。。

商標実務の難しさ(と面白さ)は、こういうところですね(苦笑)。