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パロディーTシャツの販売で逮捕(大阪)(2016年10月31日)

<新着ニュース> by 永露祥生

各種報道によれば、2016年10月26日、大阪のミナミにあるTシャツなどの販売店(6店舗)において、警察の捜査員が商標法違反の疑いで一斉に捜索に入り、店長ら13人を逮捕したとのことです。

報道によれば、これらの販売店では、ナイキに似せたロゴマークの図柄に「NICE」や「NAMAIKI」と書かれたTシャツ、アディダスに似せたロゴマークの図柄に「ajidesu」と書かれたTシャツなど、いわゆる「パロディー商品」が売られていたということです。これらのパロディーTシャツが、商標法違反と問題視されたようです。

さて、以前の記事でも書きましたが、日本の警察が商標権侵害を理由として刑事摘発を行なうケースは、数としてはそこまで多くはありません。有名商標と関係している(いわゆる偽ブランド絡み)とか、侵害規模が大きいとかという事情がなければ、警察はなかなか動かないといった印象があります。今回は、いずれも有名企業の有名商標に関わっていたことや、店舗数が複数だったことが、警察が動いた理由かもしれません。

一方で、今回問題視されたのがパロディー商品という点については、商標専門家から見て意外性があると思います。

というのも、商標法違反(商標権侵害)となるには、原則として登録商標と同一または類似の商標を使用していることが要件となるわけですが、パロディー商品(パロディー商標)の場合にはこの判断が非常に微妙、というか難しくなるからです。本事件について、「よく刑事摘発に踏み切ったなぁ…」というのが専門家の間の本音ではないでしょうか。

少し前に、「フランク・ミュラー」のパロディーである「フランク三浦」の商標の類似性が争われたのは記憶に新しいところです。この事件は商標権侵害を争ったケースではありませんが、特許庁と裁判所で異なる判断(裁判所は類似しないとした)がされました(ただし、本事件はフランク・ミュラー側が上告していますので、まだ最終的に確定したわけではありません。)。この事件の例からもわかるように、パロディー商標については、商標法の枠組みの中ではかなりやっかいなのです。

従来からの「両商標の外観、称呼、観念を取引の実情を踏まえて総合的に考慮して、取引者や需要者が出所混同するか」という類否判断手法に基づけば、正直なところ、パロディー商標のほとんどは非類似となるはずです。今回問題となったTシャツについても、賛否は別として、従来からの判断基準に基づいて普通に考えれば、商標法の枠組みの中では非類似と判断される可能性が高いように思います。

とはいえ、程度にもよりますが、パロディー商品はあきらかに元の商品の人気や知名度を利用するものですし、これによって大量の利益を得ることが商道徳上よろしくないというのは感覚的にもわかります。元の商標の権利者が(面白いと思っても)笑って見過ごしてくれるケースは稀なはずです。

このような状況の中で、商標法の下、パロディー商品(パロディー商標)をどのように取り扱うべきかというのは今後も引き続き議論の余地がありますが、とりあえず言えることは「パロディーはリスクが高い」ということではないでしょうか。

当事務所では、以前より一貫してパロディー商標は採用すべきでないことをお勧めしておりますが、本事件のような刑事摘発が実際にあったことも踏まえれば、採用にはより慎重になったほうが良いと思います。