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営業行為で注意すべき著作権問題①(2016年11月24日)

<新着コラム> by 永露祥生

営業は、事業者にとって欠かせない仕事です。どの会社の営業マンも毎日、朝から夜遅くまで頑張っています。そして、本屋さんに行くと、営業に関連する書籍がたくさん売られています。それだけ営業という仕事が難しく、日々の努力を要するものということでしょう。

ところで、このような書籍を読んでいると、たいていは「お客様に好かれましょう」とか「お客様の役に立つ気遣いをしましょう」ということが書かれています。そして、その手段の一例として、「お客様が喜ぶような書籍・雑誌のコピーや情報を送ってあげましょう」と挙げられていることが少なくありません。

しかし、この「書籍・雑誌のコピーや情報を送ってあげる」行為は、著作権法上問題がある可能性があるため、注意が必要です。


著作権の原則と「私的使用」

まず、原則的な話として、書籍や雑誌を著作権者に無断でコピーすれば、複製権侵害の問題が生じます。コピーしたものを電子ファイル化して、メール添付して送れば、公衆送信権の問題にもなり得ます。

著作権法第30条では、このような場合であっても、「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的とするとき」には、一部の例外を除き、「その使用する者が複製することができる」とされています。これが、巷でよく言われる「私的使用」と呼ばれるもので、著作権法では「原則的には著作権侵害にあたるけれども、私的使用の場合には著作権の効力は制限しますよ」という構成が取られています。

ここで、この「個人的に又は家庭内」とは、きわめて狭い範囲が想定されています。たとえば、学校や塾の板書を自分のノートに筆記したり、テレビ番組を録画して後から家族で見たり、自分用にパソコンで見たホームページをプリンターで印刷したりといった場合に該当すると考えられます。

一方で、事業において使用するものであれば、規模のいかんにかかわらず、もはや「個人的に又は家庭内」の範囲を超えると解されているのが通説です。たとえば、会社内において、会議用資料として人数分のコピーを取る行為は、もはや私的使用にはならず、複製権侵害の問題となると考えられます。


お客様に書籍や雑誌のコピーを送ることの法的リスク

具体的な状況に応じてケースバイケースで検討すべきという考え方もありますが、基本的に、業務上のコピー行為が私的使用と認められるケースはまれだと言えるでしょう。そうであれば、上述のような、営業手法として「書籍・雑誌のコピーや情報を送ってあげる」行為も、もはや私的使用とは言えませんから、著作権違反の問題を内在していると解されます

営業マンからすれば、「親切心」からの行動であって、お客様は喜んでくれることが多いと思います。しかし、相手方が法律をわかっている人であれば、そのような営業マンの行為について、「この会社のコンプライアンスは大丈夫なのか?」という不信感を逆に持ってしまうかもしれません。また、あまりに多くのお客様にコピー資料を配布していれば、著作権者も問題視するリスクが高まると言わざるを得ません。

営業マンの皆様は、ぜひこれらのリスクに留意してください。「親切心」や「お客様への思いやり」によるものでも、法律的には許されないこともあるのです。

なお、お客様に送る情報が、そもそも著作権の対象にならないもの(たとえば、法律の条文、裁判の判決文、単なるデータ)であれば、問題はありません。また、そのお客様が、プライベートでも親友と言えるほどの親交があるような人であれば、私的使用の範囲内とされる余地もあるかもしれません。

個別具体的な状況にもよるのでしょうが、いずれにしても、お客様に「書籍・雑誌のコピーや情報を送ってあげる」行為は、基本的にはアウトということを覚えておきましょう。