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ネット検索に留意した商標採択の考察

<新着コラム> 2018年8月30日 by 永露祥生

前回のコラムでは、現代のようなSNS時代における商標の採択にあたっては、一般の人々による「炎上可能性」や「話題可能性」に注意して検討することも、大切ではないかという点を述べました。

今回も引き続き、商標の採択の場面において、商標調査の結果以外で検討の余地があると思われる点を考察してみます。


いつでもどこでも「ネット検索」の時代

インターネットが発達した現代では、「ネット検索」が当たり前となりました。
PCやスマートフォンを起動すると、まずは「Google」や「Yahoo」などの検索サイトに繋ぐという人も少なくないと思います。日常生活において、わからないことや気になることがあれば、まずは「ネット検索」をするという人が大半ではないでしょうか。スマートフォンやタブレット端末のスペック、通信技術のさらなる進歩によって、今では「いつでもどこでも」ネット検索が可能です。

ところで、このような検索対象には、世の中の商品やサービスも含まれます。
需要者は、気になる商品やサービスに接した場合、商品名やサービス名、すなわち「商標」を検索サイトでキーワード入力して、詳しい情報を得ようとするのが自然な行動と言えるでしょう。

商標の保有者である事業者側からすれば、このような検索がされた場合に、検索結果の上位に自社の商品やサービスが表示されることで、需要者の購買や利用を促進することができます。一方、検索したにもかかわらず、目当ての商品やサービスがすぐに出てこなければ、需要者は「もういいや」とせっかくの興味を失い、大きな機会損失となってしまいます。

このような実状があるため、事業者は自社の商品やサービスが、検索結果の上位に表示されるよう、日々試行錯誤を繰り返しているわけです。これが、皆さんもよくご存じの「SEO(Search Engine Optimization)対策」(=検索エンジン最適化)というウェブマーケティングの手法です。


SEO対策を意識した商標の採択

業種や取り扱う商品・サービスにもよるかもしれませんが、基本的には、どのような事業者もSEO対策を重視しているのではないかと思います。

それでは、検索結果で上位に表示されやすい商標とはどのようなものでしょうか?

その答えは当然、「まだ誰も使っていないような名称」ということになります。
すなわち、造語性の高い商標ということになるでしょう。

たとえば、新しい商品商標を考案したとします。最終候補は2つまで絞れました。
ここで、1つは「シオン」、もう1つは「シオンロジック」としましょう。
商標調査をしたところ、どちらも登録・使用できそうです。

では、最終的にどちらを採用しようかという話になります。
この時、言いやすさ、覚えやすさ、シンプルさ、花のきれいなイメージを重視して、前者の「シオン」にしようと考える方が少なくないと思います。このような比較的シンプルな商標が登録できそうというのはある意味ラッキーですので、調査を実施した弁理士もこちらをオススメするかもしれませんね。

一方、SEO対策という点では、後者の「シオンロジック」に分がありそうです。
「シオン」で検索した場合、検索結果には「シオンの花」を始め、多くの同名の事業者や商品・サービスが表示されるでしょうから、この「シオン」の商品が検索結果の上位に表示されるためには、SEO対策に相当な努力と時間を要することになるでしょう。
しかし、もし「シオンロジック」という語がネット上で誰にも使われていなければ、その商品紹介ウェブページなどは、比較的簡単に検索結果の上位に表示されると考えられます。

もちろん、実際の検索においては部分的なヒットでも上位に表示されるため、たとえば非常にSEOに強い「シオン」や「ロジック」のサイトがあれば、こちらが優先的にヒットしてしまう可能性はあるでしょう。しかし、ある程度の時間が経てば、おそらく自分だけが使っている「シオンロジック」のウェブページが上位表示されるようになると考えられます。

ただ、やはり「シオンロジック」は、「シオン」と比べて覚えにくい、印象に残らない、需要者に浸透しにくそう、etc・・・といった懸念が残ると言わざるを得ません。ですが、ウェブマーケティングのしやすさを考えれば、有利な面があるとも考えられます。


結局のところは、事業戦略しだい

このように、上記のような例の場合は、それぞれの商標の採択には一長一短があると言えるでしょう。結局は、どのような商品・サービスを取り扱っているかや、対象となる需要者はどのような人たちかといった点などを含め、自社の事業戦略によるところが大きいかと思います

ネット販売やネット集客を重視しているのであれば、上述のように商標の採択で迷った際には、SEO対策の観点も踏まえて、あえて造語性の高い商標を採用するといったやり方もあるかと思います。この先も、ネットビジネスの規模は拡大していくと考えられますので、このようなSEO対策の観点からの商標の検討も、決して的外れではないでしょう。

ただ、近年は、費用をかけることで検索結果の上位に表示できるリスティング広告という手段もありますので、資金に余裕があるのであれば、やはり商標の持つイメージを優先して採用するというやり方もあるでしょう。複合キーワード検索ならヒットしやすいと考えられる場合も同様と言えます。自社が長期的・短期的戦略のどちらを重視するかを考慮することも大切と言えそうです。

ところで、当事務所は「紫苑商標特許事務所」と言います。
商標業務専門で、基本的に特許業務は行っていませんが「特許事務所」としています。
実は、これは開業時に「ネット検索対策」を考慮したものでした。

たとえば、「紫苑商標事務所」だった場合、地元で弁理士をお探しの方が通常キーワードとするであろう「特許事務所 青葉区」とする検索では、ヒットしないことになってしまいます。「商標専門 特許事務所」とする場合も同様です。
このような不都合点を回避すべく、事務所名を最終決定したという経緯があります。(もちろん、「そのうち規模が大きくなって特許についても多く取り扱えればいいなぁ・・・」という願望も込めておりますが。)

当事務所の方針としては、ネットはあくまで情報提供の場にすぎないのですが、このような観点も含めて事務所名を決定したことは、今のところプラスになっていると感じます。

大切な商標を、ネット検索対策の観点から考案するというのは、たしかに本末転倒という考え方もあるでしょう。しかし、現実問題として、商標の採択時にはこのような観点も必要になることもあるでしょうから、本コラムが何かのご参考になれば幸いです。